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お金の稼ぎ方を忘れてしまった国 ナウル

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ニューギニア島から東に2000km、太平洋南西部にぽつりと浮かぶサンゴ礁の島がある。島の名前は「ナウル島」。そして、その島に位置しているのがお金の稼ぎ方を忘れてしまった国である「ナウル共和国」である。人口は10,210人で世界の国で4番目に少なく(世界の人口推計 2010年版)、面積は、バチカン市国、モナコ公国に次いで小さい。

お金の稼ぎ方を忘れてしまった国と聞いたあなたは、首をかしげるかもしれない。お金を稼がなかったらどうやって生きていくのだと。しかし、もしお金を自ら稼ぐ必要が無かったら・・・。そう、ナウルの人々は、20世紀末まで自らお金を稼ぐ必要が無かったのだ。

1.ナウルの歴史

ナウルへ最初に到達した人類は、今のポリネシア人やメラネシア人の先祖に当たる人々である。現在でも、ミクロネシア系の人々(ポリネシア人やメラネシア人)が主要な構成民族である。ナウルが世界史の表舞台に登場するのは、1798年にイギリスの捕鯨船に島を発見されてからである。そして1888年にドイツの支配下に置かれて、第一次世界大戦が終了してドイツが敗れた結果、1920年にオーストラリア・ニュージーランド・英国の3国を施政国とする国際連盟の委任統治領となった。第2次世界大戦が勃発すると1942年に日本軍によって占領されるが、大戦が終わると1947年にはオーストラリア・ニュージーランド・英国の3国を施政国とする国連信託統治地域となった。しかし、1967年ごろから後のナウル共和国初代大統領ハマー・デロバートによる独立運動が起こり、1968年に独立した。

2.リン鉱石の採掘により国民総ニート化

1888年にドイツの支配下に置かれてから、この国の運命は大きく変わった。ナウル島には昔からアホウドリやグンカンドリなどの渡り鳥たちが、太平洋上の中継地、または繁殖地としてたくさん飛来してきた。渡り鳥たちは、彼らの糞を島に排出していく。そんな状態が何万年も続いていった。糞には、リン(元素記号:P)が豊富に含まれている。このリンは私たちの生活にとって非常に重要な資源で、農業用の肥料や食品添加物に使われるなど用途は広い。今までの説明からなんとなく予想がつくだろうが、1889年、ナウル島は渡り鳥たちの排出した糞により島全体がリン鉱石でできていることが判明した。このリン鉱石の採掘によって莫大な富を得たナウルは、両世界大戦中はその富を狙った各国の争いに巻き込まれてしまいますが、大戦が終わるとその富を背景に一種のユートピアを作り上げる。その内容は

  • リン鉱石の採掘で得た富を背景に各種公共サービス(教育、医療など)を無料化
  • リン鉱石の採掘作業は外国人労働者に任せる
  • 国民からは税を徴収しない
  • ベーシックインカムの実現 

である。その結果、国民の失業率が90パーセント(残りの10パーセントは公務員)という驚異の数値を記録した。国民全員が国家にぶら下がったニートとなったナウル国民は、自らお金を稼ぐこともなく、1960年代から1980年代まで世界最高峰の生活水準を享受した。しかし、そのような有限の資源に依存した生活は長くは続かなかった。

3.経済破綻と財政破綻  ーそれでも私たちは働かないー

1989年、ナウルのリン鉱石の採掘量は初めて減少に転じた。そして21世紀になるとナウルのリン鉱石資源はほぼ枯渇した。経済を完全にリン鉱石の採掘に依存していたナウルは、経済が破綻し国家の財政も完全に崩壊した。その結果、飲料水不足、電力不足、燃料不足に見舞われて、さらに一時期は電話の基地局の運営も経済的に不可能となり世界から完全に音信不通となってしまった。この状況から抜け出すためにナウル共和国政府は外交的な奇策を打ち出すようになった。例えば、ナウル共和国は現在の台湾と歴史的に関係が深いのだが、中国からODA引き出すために一時的に中国と国交を結び金だけ取った後、中国と断交して再び台湾と国交を結ぶといった政策だ。また、国際金融の拠点になろうと税制面など各種の規制を撤廃しようとしたがアメリカなどの圧力によりこの政策は頓挫した。これらの奇策は、どれも上手くは行かなかった。唯一外貨を獲得できている政策は、経済援助との引き換えに行う難民の受け入れぐらいである。現在、ナウル共和国は、労働を忘れてしまった国民(特に子供たち)に働くとはどういったことかなどの概念からの教育を行なっているが、そもそもナウル国内に民間企業は存在しないし外国からの参入も乏しいので働くところがない。完全に負のループに陥っている。また、国営銀行が完全に機能していない状態なので国としてまともな経済政策を打てていない。

4.観光するにはいいかも

そんな国としてまともな状況ではないナウルだが、バカンスに行くにはいいところかもしれない。やはり国の立地から想像されるように南国の楽園といった風景がたくさん見られる。詳しくは、日本人のナウル旅行の記録などを見ることをオススメする。下のリンクは、その一例である。

https://4travel.jp/travelogue/10804004

調べてみてなかなか面白い国であったが、やはり一番凄いところは価値観として国民の中に「労働の価値」が存在していないことである。これは、つまり人間の根源的な価値観に『労働』は存在していないことを意味する。昨今、人工知能がどうたらこうたらで私たちの仕事が失われると嘆いている人が見かけられるが、ナウル共和国の現状を見てみると、案外その心配は人間にとって本質的ではないのかもしれない。

参考記事

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122700036/032000008/

ナウルの動く資源 「リン」が採れすぎて様々な国に統治され、ついには人々が勤労を忘れてしまった島

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nauru/data.html#section1

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%83%AB

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