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偽りの記憶 あなたの記憶は本当に真実なのか?

「私は自分が胎児であった時の記憶を覚えている」「UFOにアブダクションをされたことがある」など、にわかにも信じがたいことを真面目に言っている人が世の中には存在しますが、それは彼らの偽りの記憶が原因かもしれません。

人間の記憶というものは案外曖昧なものです。例えば、次の単語を1分で覚えてもらう実験をしてみます。

将来 夢 大きい 未来 大志 望み 明るい 光 ふくらむ 素晴らしい 高い 楽しい 失望 理想 人生

覚えてもらった後に、「希望」という単語はありましたかという質問をすると75%以上の人がYESと答えます。しかし、実際には「希望」という単語は覚えてもらった単語たちの中には含まれていません。なぜ、このような現象が起きてしまうかというと上の15個の単語たちは「希望」と関係があり、覚えるときに「希望」を思い浮かべてしまうからです。このような記憶を虚記憶と言います。

虚記憶は、犯罪の捜査の際に警察が証拠として用いる目撃証言にもよく現れることがあります。アメリカでは、冤罪であった事件の少なくとも75%において事実とは異なる目撃証言が根拠だったという報告があります。このような事態がどのような時に生じるかというと、警察が取調べの際にする質問が、実際に証言者が見たものとは矛盾する情報を含んでいるときに起こりやすいです。

人は、自分が経験した楽しい出来事や悲しい出来事などはよく覚えていると思っています。しかし、実際にはこのような出来事にこそ虚記憶は生じやすいのです。まず、人は感情が強く揺さぶられた出来事に関しては全体像をうまく把握して記憶することができません。例えば、あなたの前に突然、ナイフを持った強盗が襲いかかってきたとします。この時、あなたが記憶してしまうものは何かと言うと大抵の場合はナイフです。これを凶器注目効果と言います。また、楽しい出来事や悲しい出来事などが「いつ」「どこで」と質問された際にも覚えていないことが多いです。なぜなら、人は楽しい出来事や悲しい出来事を経験している際に「いつ」「どこで」などを意識していないからです。さらに、過度の緊張は人の記憶力を低下させることも知られています。

上記の理由から、もし仮に自分が経験した楽しい出来事や悲しい出来事などを無理やり思い出そうとすればそのような記憶の全体像に関しては無理やり辻褄を合わせて思い出すしか方法はありません。また、そのような出来事について誰かと話している際にもいわゆる催眠療法のような形で曖昧な記憶がまるでそうであったかのように頭に刻み込まれていきます。このように、人の偽りの記憶は作られていきます。

以上は、人間の記憶がいかに曖昧であるかを述べてきました。しかし、どうして人間の記憶はこんなにも曖昧なものなのでしょうか?

まず考えられる理由としては脳のスペックの問題です。眼などの感覚器官は、脳へ膨大な情報を伝えています。このような膨大な量の情報は、脳にとっては明らかにオーバースペックです。したがって、このような情報を記憶する際には、脳は情報を取捨選択をします。この際、記憶の曖昧性ができてしまうと考えられます。

次に考えられる理由としては、記憶の曖昧性は人間の一種の防御反応であるとの味方です。例えば、部活で血へどを吐くほどの練習をした場合、明らかにそれは辛い記憶になるはずです。しかし、人間はその時の周りにいた仲間、練習終わりの部活の奴らと食べたラーメンなど別の情報と組み合わせることにより、つらい記憶でも楽しい記憶に変える能力を持っています。この能力によって、人間はつらいことを経験しても未来に向かって生きることができるのです。

上の2つの理由を見てみると、記憶の曖昧性というものは人間が生きる上で必要な能力なのかもしれません。しかし、世の中には悪い人たちもいて、その記憶の曖昧性を利用して自分に有利な事実を既定事実にしてしまうかもしれません。この記憶の曖昧性という一種の能力をうまく使いこなすことが、私たちの人生をより豊かにしてくれるのかもしれません。

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参考記事

ニュートン 2018年 5月号

http://www.nikkei-science.com/page/magazine/9712/memory.html

 

 

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