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インターネットで政治を動かす「海賊党」

 今、ヨーロッパを中心にその勢力を拡大している政党があるのをご存知だろうか?彼らの名前は、

Pirate Party

日本語では、「海賊党」。インターネットを使って本当の民主主義を実現することを目的にした政党である。上の画像は、彼らのシンボルである海賊旗である。

1. 海賊党の歴史

 海賊党は2006年にスウェーデンで「著作権法の改正」「インターネット上のプライバシーの保護」「情報の自由なアクセス」などを目的として立ち上げられた。デジタルテクノロジーが情報のコピーをかぎりなく容易にした時代、情報は自由に共有されるべきである。この主張に関連して、コピー製品を海賊版などと呼ぶことから、彼らの名称は「海賊党」になった。彼らの主張は当初著作権法改正などに特化したものだったが、スウェーデンで若者を中心に支持を拡大。彼らの政策は社会に対する包括的なものに変貌していき、「デジタル時代の市民権」を守るために政治の透明性を徹底すること、デジタルテクノロジーを使って市民の直接選挙を可能にすること(液体民主主義)などが追加された。海賊党に端を発する政治運動は、ヨーロッパ全体に波及していき、遂に2009年には欧州議会選挙で2議席を獲得するに至る。勢いはヨーロッパ各地の地方議会にも波及していき、ドイツ、スイス、オーストリア、チェコ、スペインの地方議会で議席を獲得した。そして、2016年にはアイスランドの国政選挙で議席を10獲得して第1党になった(2017年の総選挙では議席を6に減らし第6党となった)。現在では、日本も含めて70カ国以上で活動を行っている。

2. 海賊党のポリシー

 彼らにはポリシーが存在する。以下にそのポリシーを示す。

  • 表現の自由、コミュニケーション、教育の自由を守る。一般市民のプライバシーと市民の権利を尊重する。アイデア、知識、文化の自由の流動性を守る。
  • 著作権法および特許法の改革を政治的に支援する(=つまり技術や知識などは独占されるのではなくみんなに共有されるべきであるということ)。
  • 最大限の透明性を保ちながら民主的に熟議を実施、そしてその熟議への参加を促すことを約束する。
  • 暴力による行動を支持しない。
  • 可能な限り、フリーソフトウェア、フリーハードウェア、DIY、およびオープンプロトコルを使用する。
  • 全ての人にオープンで、参加可能な、公共政策の共同構築を政治的に保護する
  • 直接民主主義を インターネットを用いて実現(E-democracy)
  • 情報に対するオープンアクセスの実現
  • 情報に対するオープンデータの実現
  • クラウドファンディングとクラウドソーシングの積極的な利用

彼らの標榜しているポリシーからも、彼らが既存のいかなる政党とも性質が異なっており、革命的であることがわかる(特にテクノロジーの積極的な利用の点で)。

3. 海賊党が標榜する民主主義 「液体民主主義」

間接民主主義は、寡頭制(実質的に少数のエリートや資産家が議会を支配してしまう)や腐敗、偏ったロビイングにより、議会と民意の間に不当な乖離が起きることがしばしば問題視されてきた。

また、直接民主主義では投票者が十分な知識を持たないまま、困難な選択を求められてしまう可能性がある。

 これらの問題を解決するのが、海賊党が主張している「液体民主主義」というものがある。液体民主主義とは、2010年、ドイツ海賊党によって最初に提唱された、インターネットをつかった政治的意思決定の方法である。簡潔にその内容を述べると

発議ができて、
他の人に投票を委任できる直接民主主義

である。

 発議ができるとはどういうことだろうか?まず液体民主主義のもとでは、参加者はだれでも平等に法案を起草し、提案することができる。そして、提案された法案は参加者全体に共有され、参加者は自由に草案の改正案や代替案を提出することができる。この過程を経ることにより、最終的にブラッシュアップされた法案が出来上がる。海賊党は、インターネットを駆使することにより誰でも法案を起草、発議することが可能であると考えている。

 他の人に投票を委任できるとはどういうことか。例えば、Aさんはテクノロジーに関しては詳しい。しかし、経済政策に関してはチンプンカンプンだとしよう。テクノロジーに関する法案は、Aさんは詳しいので正しい判断をその法案に対してすることができる。しかし、経済政策に関する法案は正しい判断をその法案に対してすることができるか怪しい。ここで、もう1人の人物であるBさんは経済政策に関して詳しいとしよう。液体民主主義の下では、Aさんは、自分の経済政策に関する法案のための投票権をBさんに委任することができるのである。こうして、経済政策に関する法案に対しても、Aさんは正しい判断をすることができるのである。海賊党は、このようなプロセスも現在のインターネットを用いた方法で実践すれば可能であるとしている。現在の日本の国会や地方議会を含めて、多くの議会では分野ごとに委員会を設けて、ある程度専門的な知識を持つ議員がそれぞれの委員会で実質的な審議をしている。液体民主主義の分野ごとの委任はこの仕組みに似ていると言える。

 このような過程を経ることにより、間接民主主義、直接民主主義の両方の問題を液体民主主義は解決することができるのである。

4. 海賊党が目指す社会

 彼らは、情報の独占や技術の寡占といったことを嫌うオープンソース的な思想を持った政党である。まさに、現代社会が生み出した新たな潮流と言うことができる。移動の自由の保証や技術のシェアによって社会はより発展すると考えているのである。この点では、欧米で2016年頃から見られる閉鎖的で保守的な政治運動とは、対極に位置すると考えられている。彼らが目指す社会を一言で言ってしまえばまさに

徹底的に個人の力を最大にして、個人が自立し、個人が自由を謳歌することができる社会

と言えるだろう。

5. 海賊党のサイト

海賊党本部 https://www.piratpartiet.se/politik/piratpartiet-i-korthet/

海賊党日本支部ツイッター https://twitter.com/pirateparty_jp

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6. 参考記事

欧州議会でやっていたこと

https://www.huffingtonpost.jp/2016/10/27/iceland_n_12682710.html?utm_hp_ref=jp-kaizokuto

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/post-5773_2.php

https://en.wikipedia.org/wiki/Pirate_Party

私の政策―ボーダーレス

https://www.buzzfeed.com/jp/kantarosuzuki/pirate-party-and-liquid-democracy

 

 

 

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